吉野家物語①
どうも
「雨が降っている描写を線で書くのを世界で初めてやったのは歌川広重」
であることに非情に驚いているでお馴染みのタケットです。
僕の近所に吉野家が出来た。
僕は金のない貧乏大学生。
下宿させてもらっているも、お金がないので食費の捻出に困る日々。
自炊で食費を浮かそうとするも、時間が掛かり非常に面倒だった。
そんなときに吉野家が出来た。
安く肉が食えて、それでいて皿洗いなどの手間がなくなるのは、
勉強で忙しくなってきた僕には非常に都合が良かった。
だから僕は週8くらいで吉野家に行っている。
今日は、そんな吉野家でのある物語。
近所に出来た吉野家は、オープンしたてで店員さんもまだ仕事を覚えきれておらず
慌ただしい様子だ。
プリペイドカードで支払いをすると毎回困ってしまう店員さん。
ご飯のおかわりを頼んだだけでテンパってしまう店員さん。
クーポン券を見せたらビックリする店員さん。
ファーストフードを食べに来ているのに、店員さんがめちゃくちゃスローな吉野家。
僕が今日吉野家に行ったら、案の定慌ただしくしている店員さんがいた。
あまり見かけない店員さんだった。
おそらく最近バイトを始めたのだろう。
僕のところに水を持ってくるときも
「な、何か、ご、ご注文は、お、お決まりでしょうか?」
と噛みに噛みたおしていた。
僕は、いつも頼んでいる牛カルビ定食を頼んだ。
その店員さんは、20歳前後の大学生ぽい感じだった。
背の高いスラッとした女性だった。
その店員さんが厨房に僕の注文を言いに行くと、なにやらお説教を受けていた。
どうやら先輩バイトマンに、さきほどの噛み倒していたことに対して注意されていたらしい。
僕は、そんなことでわざわざ注意しなくてもと思いながら、キングコング西野のオンラインサロンの記事を読んでいた。
そして一通り記事を読み終わって、厨房を見てみたら、まだ女店員さんが先輩バイトマンからお説教を受けていた。
というか、先輩バイトマンが誇らしげに、接客の仕方を言っていた。
僕は、それを見て感づいてしまった。
この先輩バイトマンは、女店員さんに、指導をしたいのではなく、
ただマウントを取りたいだけではないのか?と。
彼は、バイトの先輩というポジションを使えば、
バイトとしては後輩で、しかも女性の人に、
偉そうに、かつ長々と自分の思う存分
マウント取れると思っているのではないかと
僕は思った。
長々と先輩バイトマンの話を黙って聞いている女店員さんがなんだか不憫に思えてきた僕は、なんとか彼女の助けになりたいと思った。
しかし、僕にはどうしようもない。
厨房に向かって
「ちょっと!いつまでお説教しているんですか!」
というのも筋違いだし、
「さっき噛み倒していたこと全然気にしていないですよ。」
とわざわざ言いに行くのも変だし。
そんな僕は些細ながら彼女の手助けになりたいと思い、
彼女が僕のところに牛カルビ定食を運んでくれた際に、
いつもより少し大きめの声で
「ありがとうございました。」
といった。
ほんの些細なことだが、僕は彼女の手助けになりたいと思った。
相変わらず
「ぎゅ、牛カルビ定食、に、になります。」
と噛み倒して運んできたのだけども。
彼女は、厨房に戻ったら、また先輩バイトマンからお説教を受けていた。
はぁ、かわいそうだなと思いつつ、僕は牛カルビ定食を食べ始めた。
すると厨房の方から笑い声が聞こえてきた。
見てみたら、先輩バイトマンと女店員さんがにこやかに笑いながら喋っているではないか。
そして10時になったとき、先輩バイトマンが
「お、時間だね、それじゃお疲れ様、気をつけてね。」
と優しく、女店員さんが帰りやすいように気を遣ったことを言い、
女店員さんも笑顔で
「それじゃお疲れ様です。先輩はもうちょい頑張って下さいね。」
と返していた。
どうやら僕は勘違いしていたらしい。
僕は性根が腐っているから、先輩バイトマンが偉そうにお説教しているように見えていたが、本当は彼らは仲がよく、先輩バイトマンはいい人っぽい。
そして女店員さんが帰った後、先輩バイトマンが僕の水を入れてくれたり、お会計をしてくれたのだが、ただただ丁寧でいい人だった。
今日も僕の悪い癖が出た。
勝手に決めつけて勝手に悪い想像をしてしまう悪い癖が。
僕は猛烈に反省しながら、吉野家を出て行った。
なんせ今日僕は端から見たら
『ただ、「ありがとうございました。」と大声で言う変な人』
なんだから。
今日の牛カルビ定食はいつもよりしょっぱかった。